第6章 ある夏の一日
「ヒカリちゃん、ここだよ!お兄ちゃんたちが働いてるとこ!」
「はい!・・・ふー、結構歩きましたね」
夏休みのある日。私と江先輩は、少し離れた町にあるファミレスまで来ていた。今年の夏は何十年に一度なんて言われてるぐらいの暑さ。駅から結構な距離を歩いてまでもこのファミレスに来た理由は、さっき江先輩が言った通り。
地元に戻ってきてた真琴先輩がお友達に頼まれてここでバイトを始めて、そこに助っ人で遙先輩、それに渚先輩、怜先輩・・・私は直接は知らないけれど、遙先輩の中学時代のお友達、更には帰国してた凛さん。それに・・・宗介さんも手伝うことになって。
ずっと、行きたいね、なんて江先輩と話してたけど部活とかで忙しくようやく予定が空いたのが今日だった、ってわけだ。ちなみに今の時間、シフトに入っているのは凛さんと宗介さん。凛さんはホール、宗介さんはキッチンの仕事をしていると聞いている。
「ホントだね。なんか冷たいものも頼んじゃおっか」
「そうですね。あ!このかき氷パフェっていうの、すごく美味しそうですよ!」
「わあ〜!私、それにしようかなあ」
そんなことをワイワイと話しながらお店の中へと入る。すると、
「いらっしゃいませ!2名様ですか?」
元気よく店員さんが迎えてくれる。凛さんはどこにいるんだろう、なんて店員さんの後について席に向かう途中で店内を見渡してみる。昼の忙しい時間は外してきたけれど、やっぱり夏休みだからかお客さんは多いみたい。遠くの方の席で、凛さんがいそいそと料理を運んでる姿が見えた。
「凛さん、なんだか忙しそうですね」
「うん。でも今日行くって言ってあるから、多分後で来てくれると思うよ。もちろん、宗介くんも・・・ね?」
案内してもらった席に座りながら話をしていると、いきなり江先輩が宗介さんの名前を出すから、一気に顔が熱くなってしまう。
「い、いえ!宗介さんはキッチンだし!い、忙しそうだし!あ、あの!え、えっと・・・」
「ふふふ・・・さ、とりあえず何食べるか決めちゃおっか」
「は、はい・・・」
色々言い訳してみたけれど、それでも宗介さんに会いたかったのは事実。赤くなった頬を隠すようにメニューを広げた。