第21章 富山城、再び
『謙信、俺はこの休戦協定を高く評価したい。まさかお前から話を持ちかけるとはな』
『これは協定であって同盟ではない。織田軍とは今までもこれからも敵同士だ。俺はいつからか織田軍のやつらを相手にしても楽しくなくなった。だからこれはつまらぬ戦いをしないための協定だ』
『それは天女の存在が影響してるな』
『ああ、自分でもわかっている。もし織田軍の奴らがあの女を泣かす様な事があれば、すぐにでも協定を破棄して春日山に連れ帰るつもりだ』
『連れ帰るのはいいが監禁はダメだぞ。ま、これで良かったんじゃないか』
『武田軍にはこの協定は無意味なものだが、それでも良かったのか?』
『謙信には世話になってるからな。それにこれは休戦協定であって同盟じゃない、そうだろ。だから何の問題もない』
謙信も信玄も表情は柔らかく、この日は遅い時間まで酒を酌み交わしたのだった。