• テキストサイズ

【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第1章 新参者の僕


『青い瞳のサムライ』伊原礼之の初の世界選手権は、7位入賞という個人的には今の自分が出来る全てを出し切れた結果となったが、しかし同時にまだまだ世界の壁は高く、険しい事を思い知らされていた。

今季の世界選手権は、圧巻の演技でリンクを魅了した『漆黒の怪物』勝生勇利が2連覇を達成し、今大会を最後に競技引退を発表していたクリストフ・ジャコメッティは僅差で2位、そしてカザフスタンのオタベック・アルティンが3位につけていた。
「おめでとう。そして…有難う。最後の試合で勇利とここまで優勝争いが出来て、本当に嬉しかったよ」
「僕も…僕も、クリスと長い間競い合う事が出来て、良かった…!有難う、本当に…」
「ホラ。勝者が表彰台の上でそんな風に泣いてたら、ヴィクトルコーチに怒られちゃうよ?」
「…っ、うん…うん…っ!」
節くれたクリスの指で拭われるも、零れ続ける勇利の涙は留まる事を知らず、とうとうクリスの腕の中で泣き出してしまう。
「クリス!何俺の勇利を泣かしてんの!」
「アンタよりクリスの方が、勇利と付き合い長いやろ。あれ位好きにさせたりや」
リンクサイドで今季から勇利のコーチ専任となったヴィクトルが喚いているのを、彼の隣にいた勇利の元同期で振付師の藤枝純が、宥めにかかった。

「…優勝した癖にメソメソ泣いてんじゃねーよ、バーカ」
台乗りを逃し4位で大会を終えたユーリは、表彰台のライバルや友人を祝福と同時に複雑な想いも抱えながら一瞥した後で、他の選手達に混ざってメダリスト達に視線を送る礼之の真剣な横顔を見つめた。
青臭くもこのリンクの上で持てる力の全てをさらけ出した礼之の演技は、観客を魅了しただけでなくユーリ達選手の闘志にも火をつけた。
SPのミスで出遅れていたユーリも、「1年目のアイツが根性見せたのに、俺らが半端な真似する訳にいかねぇだろ」とFSでの巻き返しに繋がったのだ。
そして、友人でもあるオタベックも「あの演技を目の当たりにして、燃えない奴がいるか?」と礼之の健闘を称える発言をし、それを聞いたユーリは何処か嬉しさと誇らしさを感じていた。
(胸張っていいぞ。お前は、『ソルジャー』にも認められた『サムライ』なんだ)
面と向かって口にするのは気恥ずかしいユーリは、心の中で呟いた。
/ 15ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp