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【HQ】脳内妄想小部屋

第2章 大晦日の狐‐ハイキュー!!冬休み企画!‐


出来る限り静かに、足音を立てずに、階段を上がる。
終点の洞穴の前にはアキが立っていた。

来てるなら連絡くれても良いじゃん、とか。
一緒に年越ししたかった、とか。

言いたい事は沢山ある。

それでも、口より先に体が動いてアキを抱き締めていた。

「本物だ。本物のアキだ」

狐に化かされてるのかもって、現実離れした事を考えちゃったし。
月明かりしかない暗い中、アキが穴の奥に帰ってしまいそうに見えたから。

「その狐ネタ、そろそろ止めね?抱き締めてやる気失せたぞ」

でも、緩い感じの喋り方で、現実に戻ってこれた。

「なんで居るの?来ないって言ったクセに」

恥ずかしくなって体を離す。
ついでに口から出たのは、可愛くない言葉だった。

「あのな、ちゃこ一人で夜中まで出歩かせる訳ねぇだろ。迎えに来たんだよ」
「やっぱ狐だ!私騙されてる!化かされてる!」

予想外に優しくて、逆に信用出来ない。
軽くパニクって手をジタバタさせる。

「化かしてねぇよ。つか、俺が狐だったら、もっとイケメンに化けるっつの!」
「…あ、そっか」
「ソコで納得すんな!」

物凄く納得して、パニックはあっさり収まった。

「あ、でも、アキって器用貧乏だし?上手く人にはなれるけど、思ったイケメンにはなれなかったとか?」
「狐設定いつまで続ける気だよ」

落ち着いてくると、からかいの気持ちが沸き上がってくる。
いい加減呆れちゃったみたいで、アキが先に階段を下り始めた。
慌てて背中を追い掛けて、並んだ鳥居の辺りで追い付く。

「あ、アレか。狐の行列」

アキの視線の先には、参加者の提灯の灯り。

「うん。幻想的だよね。来年は参加したいなー」
「今年じゃね?」

頷いて願望を漏らすと、否定でも肯定でもない突っ込みが返る。

それで大切な事を思い出した。
ムッとしている場合じゃない。

「アキ、明けましておめでとう」
「今更か。まぁ、あけおめ」

一番最初にこの言葉をアキに言いたかった。
略語だったけどアキも挨拶を返してくれて、仲直りは出来てるのだと実感する。

大晦日に狐にした願掛けは、ちゃんと叶ってくれたから、お狐様を信仰しようと思った。
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