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おかえり〜I'm home〜(R18)

第9章 summer memory④





《及川side》


「書けない・・・・・・まだ、心が決まってないな・・・」


情けないな。だっさいな。たった1枚の紙に、自分の名前を書いて、すべて終わりにすることも出来ない。

俺の心はあの日から時間が止まったかのように、何も進んでない。
ただ時間だけが過ぎていき、俺と彼女との溝はもう埋められないところまできていた。

俺だけに向けられた笑顔も、温もりも、今はどこを探してももう色褪せて消えてしまった。まるで砂のように、俺の手から、指の間から零れ落ちていった・・・

愛してるのに、愛せない。

あの笑顔が、体が、
俺以外の誰かと交わったことが許せなくて、
彼女がわからなくて・・・

そんな事、もうどうでもいい。綺麗に流してあげるよなんてあの時言えたら、君は今も俺の腕の中にいてくれたのかな。

考えればただ苦しい。
荒れた大地が雨を求めるように、温もりが欲しかった。

だけど一番欲しかった温もりに触れることは、もうできない。

ならば俺は・・・俺は、俺は・・・・・!




その時、ふわりと俺の頭を包み込む温もりがあった。


「え・・・?」

りお・・・?

りおは俺の頭を抱きしめ、そっと髪の毛を撫でた。
細い指先が、震え混じりに俺に触れている。


「辛いよね・・・忘れるなんて、できないよね・・・」

優しい、けれど、芯の通った声が頭の上から降ってくる。


「・・・・・・・・・」

「私、及川さんに代わって泣いてあげたいけど、そんなことしたって救われないもんね」

同情じゃなくて、ただ心に寄り添ってくれる。

「だけどね、及川さん・・・。一時だけでも、忘れられる方法なら、私、わかるよ・・・」


りおの体がすっと離れた。
代わりに俺の顔を両手で包み、目線を合わす。


「・・・及川さん」

その瞳は、何かを覚悟した色をしていた・・・・・・




「私のこと、抱いてください」



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