第4章 和平交渉
雑誌を睨む。テーマパーク、観光スポット、映画、ゲームセンター等の遊技場のリサーチから最新、ゲームボードやゲーム機等々。一緒に遊ぶ。それこそが友達の本分。顔合わせを拒絶している以上、難しいと自覚はある。
『もう少し、“その子”のことを教えて欲しいな』
数時間の前の会話を思い返す。
「すまん、それは出来ない」
私は砂粒の優しさに甘えすぎている。彼女の質問は至当だ。相談する上での義務を私は放棄した。情報を開示し無ければ作戦は練られないというのに。
『…うん、わかった。なら貴方の怒りが収まるまで貴方がその子と行きたい場所ややりたい事を考えるって言うのはどうかな?』
彼女はそれでも私の助力を選んだ。
「本当にどう、恩を返せば良いのか」
砂粒に憂城の事を話すのは憚れる。彼女を信用できないからではない。万が一、彼と彼女が遭遇し戦闘にならないようにとこっちの勝手な配慮からだった。戦士だからと必ず出会えば殺し合うとは思わないが彼等は十二支家に所属する者達だ。彼等に無くともその背後に居る者達の思惑は悪意は常に交差している。念には念を、だ。無意味かもしれないが。
「意識を切り替えねば」
雑誌に再び目を配らせる。見たことのある風景、ここも行ったな。あそこも。行っていない場所が少ないくらいだ。色んな場所へ赴いた。その上で憂城と行きたい場所か。どこだろう。どこがいいだろうか?
「穏やかな場所がいいな。静かな場所が」
ネオンで明るく染まった場所より。あのログハウスがあったような自然に囲まれた、
血に染まった、人達。
「まだ、駄目だな」
胃の底に熱した鉄塊が留まっているかのような怒り。それと同時に呆けて立ち尽くす憂城が瞼の裏に焼き付いている。
「今頃、彼は何をしているだろうか」
着信拒否をしているので連絡などありえないし追ってきている情報は未だにない。もしかしたら手に入らないと諦めたかもしれない。それもそれでいいかもしれない。
「まぁ、複雑ではあるが」
本当に世の中、ままならないな。