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不完全な『アダムとイブ』

第20章 道標


月明かりの下に、二つの影が映る

何とか立ち、肩を抑えているのはセイジだった

「チッ....危なかった....」

セイジは肩から血を流してはいるものの致命傷ではない様子だ

一方、らんは膝を付いていた

「ぐっ....ッ....」

腕と脇腹に弾を当てられ血が染み出す

ポタッ....ッ....ポタッ...

白い花に赤い血が滴り落ち、花弁は赤く染まる

「もったいないな。お前の血は、まだまだ利用価値があるんだ」

セイジは近づき、顎を持ち上げ、視線を合わす

「何故、私があのヴァンパイア達を追ったか分かるか?」

「もちろん、ユイの事もある。
しかし、一番の目的は...

"貴様の血だ"」

私はハッとし、セイジにナイフを向ける

「おっと!」

セイジは1歩下がり、不敵に笑う

「まぁ、賢いお前は気づいていたのだろうがな」

「..最低....っ....はぁ...」

声を出すのもままならない程に、痛みが広がる

しかし、それは銃弾の痛みだけではなかった

息が詰まる...

(だめ...ッ...胸が苦しい...)

傷口から銀の血によって体が腐食されているせいで、心臓が圧迫される


終焉の懐時計が示した時まで...あと...ーーー



カチャッ

「っ!!!!」

セイジはらんに銃を向ける

「貴様は厄介者だからな。
まぁ、少し手荒くしても死ななければ問題ない」

「っ....」

まるで....道具扱いだ
彼等にとったら私はただの銀の血の容器にすぎないのだろう
彼等だけじゃない、嘗て私を利用したヴァンパイアだってそうだ

誰も、私自身を見てはくれない...


しかし..."彼"は違った

純血でありながら、私を側に置き
私を見て、私の正体を知ってもちゃんと愛してくれた

涙が目に込み上げてくる

『全てを終わらせる』

この言葉には、らん自身の死が意味されていた

このままではまた、犠牲者がでる
ましてや銀の血を後世に繋ぐわけにはいかない

本当は胸を張って貴方に会いに行きたかった..

でも....叶わない

もう時期、この血は私の肉体を殺す

嘘をついてごめんなさい

ー銃にかける指に力が込められ



ーーーーーーバンッ!!!!

一つの鋭い銃声が鳴り響く



(さよなら....ッ....シュウ....)
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