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不完全な『アダムとイブ』

第18章 使命


ーーーんっ....

「あ、ユイさん....」

目を覚ますとアズサが心配そうに顔をのぞき込んでいた

無神兄弟とユイはいろいろな場所へ点々と逃げ続け、森の小屋に身を隠していた
しかし、人間であるユイには環境の変化に追いつけず、体調を崩していた

「ユイさん....大丈夫....?」

アズサは手を握る

「うん....ごめんねアズサくん....」

ユイが謝るとアズサは首を横に振った

「ルキくん達は....?」

周りを見渡すと部屋にはアズサしか居なかった

「みんな....周りの様子を見に行ったんだ....すぐかえってくるよ
だからユイさんは....もう少し休んでて」

アズサの言葉に安心し、ユイは再び目を閉じた

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「ここならば、そう簡単には見つからないか....」

ルキは森の湖の側にいた

月が水面に映り、水が揺れる

それは、まるで彼の心の中を写し出しているようだった

「くそっ....」

ルキは側の木に思い切り拳をぶつける

彼もヴァンパイアハンターが自分達を追ってきている事には気付いていた
しかし、らんの気配は全く感じられなかった
その事に、安堵している自分が滑稽でしかたない
許されるはずなどないのにーーー


「ルキくん」

名前を呼ばれ、はっとする

「コウか。どうした」

コウは足を伸ばし湖の中をのぞきこむ

「うんん。ちょっとルキくんが思いつめてるみたいだったからさ」

コウは悩むルキを心配していた

ルキは溜息をつき、小屋へ帰ろうとする

「なんでだろ....」

コウが呟き、ルキは足を止める

振り返るとコウは赤い義眼で夜空を見上げていた

「やっと、自由になれた筈なのに....

まだ空は四角いままだ」

彼等は逃げ続けなければならない
カールハインツや世界やらんからも....
逃げたその先に自分達の求めるモノは見つかるのだろうか....

「コウ....」


「だけど、後悔はしてない。
それはルキくんも同じでしょ?」

コウはその眼で兄弟の心を見透かす事はしない

「当然だろう。これが俺達の選択だ」

そう言うルキの言葉は信用できた

また彼の悩みの種もコウは理解していた

分かっているからこそ何も言わない....何も言えない

自分達は歩み続けるしかないのだ
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