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不完全な『アダムとイブ』

第17章 逃亡


ー無神家ー

人の気配が無くどこか寂し気な無神家には美しい音色が響いていた

「ん....」

その音楽を奏でているのはらんだった
透き通る様に白く細い指で鍵盤を撫でる
彼女が創り出す音楽には吸い込まれるような力があった

そんならんを眺めながらシュウはソファーで横になっていた

少しすると微かに寝息が聞こえる

らんは手を止め、シュウに近づき、鬱陶しそうにしている髪を避けてやる

「ふふっ」

可愛いなと思いながら頭を撫でていると

「なにしてんの?」

「わぁ!」

突然目が開き、腕を引っ張られシュウの胸に埋まる

「なんだ、もう止めたのか」

シュウは1つあくびをする



ルキ達がこの家を去ってから、私達は同じ時を一緒に過ごすようになった


2人でご飯を食べて、こうして音楽に触れたり、一緒に眠ったり
まるで、この家の時だけ止まっているような
本当に幸せな時間を送っていた


しかし........


ぎゅっ

らんはシュウの腕に抱き着く

「らん?」

なんだか、物静かな彼女に問いかける

「........」


シュウは気付いていた
確かに今の時間はとても穏やかで幸せだ
しかし、あの日かららんはどこか寂しげで、心の底から笑う事が出来ていない

そして、このまま全てから目をそらし続ける事は2人にとってよくないことだということも


時は刻々と近づいていた



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