第16章 代償
らんは一つの写真を持ち上げる
それには、まだ幼い頃の無神兄妹が
並んで眠っているのが写っていた
みんな引っ付いて、仲が良いのがよく分かる
「この間....何で学校なんか来てるのかってシュウ聞いたよね....?」
シュウは以前言ったことを思い出す
「あぁ」
「....もちろん、シュウに会うためっていうのも本当だよ....」
写真を握り締める力を強める
「もともと、私が下界に来れたのは、みんなのおかげなの....
私は外に出る事も出来なくて、ずっと魔界の屋敷に住んでた
そんな私の為にみんながあの方を説得してくれて、こっちに来ることが出来た....
だから、私は今此処に居て、学校にだって通えるの」
みんなのおかげで、自分は自由になり、シュウとも出会う事が出来た
その事について彼女は物凄く彼らに感謝していた
「でも....一番の理由は....
お兄ちゃんに褒めてもらうこと」
らんは寂しげに笑う
「シュウは長男だから、よく分からないかもしれないね」
確かに、彼にはそうゆう願望はあまり無かった
「妹とか弟っていうのはお兄ちゃんに褒められたいものなんだよ?....私だって、そう」
エデンにいた頃も
ルキは勉強を教えてくれて、正解したら頭を撫でてくれた
コウも料理が美味しく出来たら喜んで食べてくれた
ユーマも植物を綺麗に手入れしたら笑顔で答えてくれた
アズサだって、包帯を巻いてあげたら褒めてくれた
ずっと、彼等と同じ位置に立とうと、みんなの自慢になるように背伸びをしていた
瞳から涙が溢れ出す
みんなはいつだって笑顔で傍にいてくれた
ずっと、ずっと....一緒だった
「....寂しいよ....ッ....」
初めて出た彼女の本心だった
自分の我が間で彼らを困らせてはいけない
そう思って我慢していたものが全て溢れてくる
シュウはそんな彼女を後ろから抱き締める
「本当は....ッ....ずっと、一緒に居たかった....ッ」
シュウはあやす様に頭を撫でる
「俺が....お前の兄貴の代わりにずっと一緒に居てやるから....もう、泣くな」
抱き締める力を強める
「シュウ…」
彼が居てくれる、それだけで気持ちが楽になった
エデンの林檎は、少しずつでも
紅く、紅く実っているのかもしれない....