第4章 ―コーヒー豆は突然に―
ということで今先生に無理矢理頼まれた資料を運んでいる。
「はあ~……ついてない」
ゴンッ
「「いたっ(いてっ)」」
廊下を歩いてると、誰かにぶつかった。
その反動で手に持っていた資料が無惨にも廊下に散らばった。
「いったー……すいません、前見てなくて」
「いや、俺の方こそすまん」
あ……これはっ!
「コーヒー豆だあああ!」
「はあ!?」
あの、テニス部の象徴とも言えるコーヒー豆が動いて喋ってる!これはスクープに出来るぞー!
「とりあえず、コーヒー豆さんのサイン下さい!」
「だからコーヒー豆ってなんだよ!?俺の名前はジャッカル桑原だ!」
「ルー大柴か!!」
「違ぇよ!」
なんだ違うのか。
「まぁ冗談はさておき、」
からかいに満足した私は、下に散らばった資料を集めていく。するとジャッカル桑原君もしゃがんで資料に手をつけた。
「はぁ……たくっ」
「えっ。手伝ってくれるの?」
「このまま立ち去ったら俺が薄情だと思われるだろ。しょうがねぇから手伝ってやるよ」
キュンッ
あれ、なんだろうこの気持ち。
インスタントコーヒー豆がコピ・ルアクに見えてきた……
「──よし、これで全部だな。どこに持ってくんだ?」
「資料室……」
「そうか。じゃあ半分持ってやるから行くぞ」
「あ、ありがとう」
「こういうのは慣れっこだから。いつもブン太に押し付けられるからな……」
あぁ、御愁傷様です……
それから暫くコピ・ルアクさんの愚痴を聞いて資料室へと着いた。
「ここで大丈夫か?」
「うん。ありがとう、ここまで運んでくれて」
「いや、別に大したことじゃねえって。じゃあな」
「ホントにありがとー!」
…………。
はっ!取材するのすっかり忘れてた!!
結論、ジャッカル桑原はただのコーヒー豆じゃなく、コピ・ルアクだった。