第10章 リードブロックとゲスブロック
ちゃんとお互いの気持ちを伝えあった牛島と私は、高等部になってから出来てしまった距離を縮めるように、毎日連絡を取り合うようになった。クラスも部活の体育館も離れているので、そうでもしないとこの広い学園内ではなかなか会う事もできない。
今日は牛島とお昼を食べる約束をしたので、リカコに断りを入れているところだった。
「まあ、納まるところに納まったって感じだよね」
「私も迂闊な記事書いちゃって申し訳なかったよ…。緑川さんと牛島くんが中等部の頃から公認カップル同然っていうの知らなくて…」
成田さんがシュンとしながら頭を下げた。こちらこそ変な気ばかり使わせて申し訳なさ100%だ。それに成田さんは高等部からの入学だし、私達の関係を知らないのは当然だ。
「成田さん謝らないで。その、天童くんと付き合ってるのは事実だし…」
「でも!牛島くんと高岡さんが合宿のとき抱き合ってたからって、緑川さんの気持ちも考えず夢中で書いてしまって…」
そうだった。あの記事の写真はなんだったのだろう。あとで本人に聞くしかあるまい。
「いいのいいの!この子がフニャフニャ迷ってるのが悪いんだから!こう、スバッとさ!好きなら好きって言うだけなのにね。成田さんに落ち度なし!」
「…諸越さん」
「いいから行ってきな」ってリカコに目で合図され、私は学食へ向かった。学食内の右端のほうには二人掛けのテーブル席がいくつかあり、三年生がよく使っている人気席だ。今日昼前の授業が体育の自由練習と言っていた牛島は早く授業が終わるので、席を取ってもらっている。
「…緑川、ここだ」
「牛島!」
一番奥の、話を聞かれなさそうないい席だ。牛島はとっくに食事を始めていて相変わらずのマイペースぶりに笑ってしまう。
「…待っててよ」
「ああ、すまない。これ、食べたいと言っていた限定10食の特A定食の券だ」
「えっ!別にいいのに…」
「いいから早く取ってこい」
こんな些細なことだけど、彼氏っぽい事をされるとやはりニヤけてしまう。以前からコンビニじゃんけんとかは皆でやっていたけど、こういうのは初めてだから牛島なりの彼女特権なのだろう。