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12色のアイ

第10章 赤いチューリップ


「百合……?え、今、九条さんの口から……?」
彼女は酷く困惑している。
ボクは深呼吸を3回程して立ち上がった。
「はぁ………ごめん、びっくりさせて」
「いえ……その、大丈夫……なんですよね?」
「……花吐き病、だったんだ」
「花吐き病ってあの花を吐く……?でも、"だった"って……」
「ああ、ごめん。ちゃんと説明するよ」
ボクは今までのことを全て彼女に話した。
でも、そのせいでボクがどれだけ彼女のことを想っているか知られてしまった。
花吐き病のことを話すということは、彼女への想いを話すことと同じだということに話し終わってから気づいた。
「そ、その……お辛かったでしょう………治られてよかったです………」
彼女は顔を赤くしてもじもじしている。
ボクだって恥ずかしい。
でも、それよりも想いが通じあったことが何よりも嬉しい。
「……ねぇ、抱きしめていい?」
「ぁ……は、い……」
優しく壊れ物を扱うように抱きしめる。
彼女の小さな鼓動がボクに伝わってくる。
「ねぇ、キスしてもいい?」
「えっ……!そ、それはっ………」
「いいでしょ?……百合」
「ひゃっ!な、名前っ、んっ!」
ボクは返事も聞かずに彼女の唇を塞いだ。
名前を呼んだだけなのにあんなに可愛い反応をする百合が悪い。
「ん、んんっ……ふぁ……ん」
彼女の唇は小さくて、柔らかくて、甘い。
ずっとキスをしていたくなる。
ボクは頑なに閉じる彼女の唇を舌で強引に割った。
「ん!く、じょさ、んむぅ……!」
ボクは舌で彼女の口の中を蹂躙した。
舌まで小さくて可愛い。
少しの間キスを堪能すると、ボクはゆっくりと唇を離した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「百合…好きだよ。ボクのそばにいて欲しい」
「わ、私だってそばにいて欲しい……離す気なんて無いんだから………」
「ふふっ。ボクら似た者同士だね」
「そうだね」
「ね……ここにボクのって印つけてもいい?」
トン、と指で彼女の首を指す。
彼女は顔を真っ赤にして小さく頷いてくれた。
「じゃあ、遠慮なく……ん…」
小さなリップ音が店の中に響く。
彼女の首筋にはくっきりと赤い華が咲いていた。
ボクは幸せを噛みしめるように、また、彼女を優しく抱きしめた。
そして、抱きしめたまま彼女の耳元でこう囁いた。
「月が、綺麗ですね」
彼女がまた真っ赤になったのは言うまでもない。
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