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12色のアイ

第8章 縄とナイフと血のキスを


微かな痛みと、身体のだるさで目が覚めた。
顔を動かして辺りを見ると、私が寝転がっているベットしか無いくらい殺風景な風景が広がっていた。
起き上がろうとするが上手く身体が動かない。
なぜか痺れているし、後ろ手で縛られている。
それに、記憶も曖昧。
どうしてこうなったのかと微かに残る記憶を辿っていると、ドアがゆっくりと開いた。
「も、もさん……」
「おっはよー!なかなか起きないから薬の量間違えたのかと思って焦ったよー」
いつも通りの笑顔を見せながら入って来たのは、私の好きな人だった。

百side

初めての経験だった。
「初めまして、Re:valeさん。本日から補佐マネージャーをさせていただきます、東雲 百合と申します」
そう言って綺麗な礼をした彼女に一目惚れをした。
どんな子が来るのか少しだけあった不安が一瞬で吹き飛んだ。
あの子欲しい。
心からそう思った。
何が好きなのか、どんな音楽を聴くのか、どんな人がタイプなのか………あの子については全部知りたい。
あの子の瞳にはオレだけ写して欲しい。
「ユキ……」
「どうしたんだ?モモ」
「オレ……喉から手が出るくらい欲しいものができたみたい………」
「そうか。モモはいつも謙虚だからたまには欲張りになってみなよ」
「いいのかな……」
「いいんじゃないかな」
「そっか……」
欲張りになっていいのか………。
じゃあ、我慢しなくていいや。
あの子の世界をオレで染める……無理矢理にでも。

「マネ子ちゃん。この後空いてる?」
「えっと……はい。空いてますよ」
「次のステージのことで相談があるんだ。だから、打ち合わせしない?」
「いいですけど……千さんと岡崎さんは?」
「もちろん来るよ。少し遅れるみたいだけどね」
「そうなんですか!分かりました!」
「よかった!じゃ、30分後に10番の会議室ね!」
「はいっ!」
本当によかった。
彼女が来てくれないと計画が台無しになるところだったよ。
真面目ないい子は素直ですごく扱いやすい。
だって、あの子ったらオレが渡したコーヒーを何の疑いもなく飲んじゃうんだもん。
だからさ……
「こんな無防備に寝ちゃったもんね」
オレはかわいい寝息を立てる彼女を抱え、誰もいない廊下に出た。
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