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12色のアイ

第5章 子犬の衣を借る狼さん


ピンポーン
家の中にインターホンの音が響く。
私は小走りでドアに向かい愛しい彼を出迎えた。
「ふふ。いらっしゃい、陸」
「えへへ。お邪魔します」
「ほら、早く入って。誰かに見られてたら困るでしょ」
「あ、そっか。お邪魔しまーす」
「もう。何回お邪魔しますって言うのよ」
「な、なんかつい…」
陸が家の中に入ると私は手早くドアを閉め鍵をかけた。
「りーく」
「なーに?」
「呼んだだけだよー」
「もー!……百合ー」
「ふふ。なぁに?」
「呼んだだけっ。さっきの仕返しー」
「もー、だと思ったー」
ああ、幸せだなぁ……。
こういう何気ない会話だけでこんなに幸せな気分になるなんて、陸と出会うまでは知らなかった。
陸の笑顔も歌も天然なところも全部が愛しいし、可愛い。
「ねぇ、何でニヤニヤしてるの?」
「え!私顔に出てた!?」
「ばっちり」
「えっとねー、陸のこと好きだなぁって思ってた」
陸の顔がりんごみたいに赤くなっていく。
…可愛い。
私が男でも即好きになってた。
それくらい可愛い。
「ば、はか!急にそんなこと言うなよ!」
「じゃあ、これからはちゃんと『言うよ』って言ってから言う!」
「わ、分かった!」
「よし…陸!今から言うよ」
「え、あ、うん!」
「……好きだよ、陸。世界で一番」
そっと陸の手に自分の手を伸ばし、指を絡ませる。
手を握ると、いくら天然で可愛くてもやっぱり男の子なんだなって改めて思ったりする。
私の手より大きくて少し骨張っててとっても男の子らしい。
「お、オレだって、百合のこと…す、好きだよ」
「ありがとう。じゃ、リビング行こ?美味しいドーナツがあるよ」
「え!ほんと!?やったぁ!」
「ふふ。喜んでくれてよかった」
私達は手を繋いだままリビングに向かった。
テーブルの上には少し前に買ってきたばっかりのドーナツがある。
陸はそのドーナツを見ると目を輝かせた。
……子犬みたい。
「食べていい?」
「手を洗ってからね」
陸が急いで手を洗いに行く。
「今日、お母さん達は?」
「……自由気ままなお二人は、娘を置いて二泊三日ハワイの旅へ出かけましたとさ」
「え……」
「今日明日はいないってこと」
「………」
「何か問題でも?」
「いやっ!ない、ありません!」
「ならいいけど……手、いつまで洗ってるの?」
「あっ!ごめん!」
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