第5章 Shake it !
【潤side】
「松本、帰ろうか」
その日の仕事終わり、翔さんの方から声を掛けてきた。
「えっ…?」
俺は、思わず固まった。
だって、今までは俺たちが押すばっかりで。
翔さんから誘ってくれることなんて、なかったから。
「なんだよ?嫌なのか?」
「い、嫌だなんて、とんでもないっ!」
慌ててデスクの上を片付けて、もうフロアを出て行きかけてる背中を追い掛けた。
「飯、どうする?」
「じゃあ俺作るよ!翔さんのために」
「お、マジで~?」
二人っきりのエレベーターの中。
俺の言葉に翔さんが嬉しそうに笑ってくれた。
「何作ってくれんの~?」
「それは、秘密♪」
「じゃあ楽しみにしてよっと」
「今日は、翔さんちに行ってもいい?」
「ああ、いいよ」
仕事中とはうって変わって、柔らかく微笑んでくれる翔さんは、まるで女神みたいで。
思わずぎゅっと抱きしめたいのを、我慢するのに苦労した。
ほんと、可愛いよなぁ…
くりくりの大きな瞳も。
ぷるんぷるんの赤く熟れた唇も。
ちょっと…いや、だいぶ撫でてる肩も。
櫻井翔っていう人間を構成している全てのものが可愛くて愛おしくて。
近付けば近付くほど、好きになってく。
ねぇ、翔さん…
俺の全部を上げたら、俺のものになってくれる…?
翔さんちの最寄り駅の近くのスーパーで食材を買って。
翔さんちにお邪魔した。
翔さんの部屋は、大量の本やら新聞やらが散乱してて。
服も脱ぎ捨てたまま、ソファに掛かってたりして。
なんか、ザ・男!って感じの部屋だった。
「わあっ!ごめん!すぐ、片付けるから!」
ソファの上にまで広がってる本を拾いながら、焦った顔するのもまた可愛い❤
「あ、じゃあ俺、飯作ってるね?台所借りま~す」
俺はスーツ姿のまま片付けてる翔さんを横目で見ながら、キッチンへと入る。
今日の夕飯はトマトソースのシーフードパスタとサラダの予定。
本当はもっと手の込んだもの作りたいけど、今からじゃ遅くなっちゃうし。
それに、さっさと食って、いちゃいちゃしたいしね❤
サラダを作りながら、パスタを茹でて。
トマトソースを作る。
「お、パスタかぁ!旨そっ!」
いつの間に着替えたのか、スウェットの上下を着た翔さんが、キッチンへとやって来て。
俺を、後ろからぎゅっと抱きしめた。