第19章 手のひら合わせて。
なんで、屋上の鍵持ってるんだ、とかめんどくさいことは聞かない。
しかも、今はそんな話ができるような状況でもないし。
屋上に出ると、ドアの横にクロは座った。
いつもだったら、お腹冷えちゃうよ…なんて声をかけるけど、今はやっぱり会話ができるような雰囲気ではない。
そんな変な沈黙はクロによって一旦去っていく。
「…なぁ、綾菜ってオレのこと嫌い?」
「え…?」
嫌いなわけないじゃん。
心の底から好きで。
「好き?嫌い?」
「好き」
「ふぅん。…じゃあ俺と一緒」
そう言ってぎゅうっと抱きしめられると、なんだか泣けてきて…。