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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第18章 分かれ道


橙色の蝋燭が灯る中、大好きな仲間たちと食べる食事は、特別なものに感じられた。酒だって、いつもの何倍も美味しい。

その理由は、皆のエミリに対する優しさが込められているからだろう。

エミリは、ケーキを頬張りながら楽しそうに会話をする仲間たちを見つめる。


「たまにはいいだろ、こういうのも」

「……フィデリオ」


大きく欠伸をしながら隣に並ぶのは、同じく片手にケーキを乗せた皿を持つ幼馴染だった。

最終試験の朝の見送りも、試験を終えエミリが帰ってきた後も、姿を見せずに呑気に眠っていたフィデリオが、お疲れさま会だけはちゃっかり出席していることに色々とツッコミを入れたくなる。

けれど、そんな自由奔放で自分第一主義なところは昔からだったと、今更思い出す。


「……珍しいわよね。アンタがいるなんて」

「そりゃあ、お疲れさま会なんだから美味いもんも食えるしな〜。わざわざ自分の睡眠時間削ってまでお前の見送りしたり、励ましてやる暇なんて俺には無ぇし」

「ねぇ、殴っていい? 2、3発くらい入れさせてくれない?」


別にフィデリオに見送りに来て欲しかったわけでも、励まされたいわけでもないが、何故か幼馴染の発言はいつも癇に障る。

軽く殺意が沸くのも今に始まったことではないが。


「お前もいい加減にさ、暴力女卒業しろよな。好きなやつ出来たって一生恋人になんかできねぇヘックシュン」

「うるさい! 黙れ!! アンタのその女たらしなとこも何とかしなさいよこのナンパ男!!」


ムカつく顔で挑発してくるフィデリオのウザさに、エミリは胡椒を振りかけて対抗する。

突然の攻撃にフィデリオは、為す術なくくしゃみを繰り返し、エミリから離れて行った。


「全くもう……何なのよいつもいつも」


ケーキをバクバクと口に放り込みながら、不満を漏らす。

だけど、腹が立つけど、そんないつも通りのやり取りが、今のエミリの心をほんのりと温めてくれた。

これが自分の日常で、ここが自分の居場所なのだと、そう教えてくれているような気がしたのだ。
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