第9章 何事も全力で

｢これから俺の席はお前の席になる、頼んだ｣



そう裕改め部長が言うと回りから拍手が起こる。


そして、デスクにあった名札が氷山 裕から日向 由架に置き換えられる。



この瞬間から私は部長へと昇格し、裕は本部長へと昇格した。



私は昨日まで裕が本部長になることを聞かされていなかった。



昨日の晩御飯のときのことだ。



｢裕は私が昇格したら何になるの？｣




｢本部長。｣



そんなしれっといわれることなんて予測していなかったため、驚いた。



本部長に昇格すると、デスクが個室になる。



そこでいろんなものをまとめたりするのだ。



[ちょっと距離ができるなー]



とは思ってしまうものの、お昼は一緒に食べる確率が上がるかも知れないと裕に言われてテンションは少し上がっている。



裕はダンボール箱をもって個室へ、




そして私はまた別のダンボール箱をもって裕が昨日まで座っていた部長の座へと足を向ける。



｢これからよろしくお願いしますね、日向部長！｣



｢いい仕事っぷり、期待してます！｣



等と声をかけられ、嬉しい反面重荷にもなっていた。



やがて始業時間となり、私は裕から引き継いだ仕事の山を取り出す。



さすが裕から引き継いだ仕事だ。



思いの外全然困る点はなくて。



さくさくを進んでいった。



｢部長、これお願いします。｣


｢部長、これどうやるんですか！？｣


｢あのー、さっきの書類、チェックまだですか？｣



部下から回ってくる仕事が全然終わらないと言うのが現状ではあった。



仕事に明け暮れていると気がつけば昼休みになってしまっていて。



裕からメールが来ていた。




[昼、よかったら一緒にどうだ？]