第5章 一晩の過ち。
部長の家でを私は家事をしていた。
昨日の飲んだときの食器を洗ったり机を拭いたり。
気を紛れさせたかったのもある。
今朝のことをなかったことにしたい訳じゃない。
ただ単に、部長とどう接したらいいかがわからない。
けど、逃げ出すようなことはしたくなかった。
だから私は大人しく部長の帰りを待つことにした。
でもいつになってもいつになっても部長は帰ってこない。
時刻はいつのまにか夜の九時を指していた。
私に会いたくなくてわざと残業したりしているのだろうか、それともただの残業なのか。
いや、もっと他に理由があるのか。
[一度、落ち着いた方がいい。]
そう考えた私はコーヒーを飲もうとした。
けどここは人の家だ。
勝手に飲むのは良くない。
私は机の上の部長が置いていった鍵と財布を手にして玄関へと向かった。
靴を履いて扉の取手に手をかける。
すると手をかけただけなのに扉が引っ張られた。
いつのまにか私の手からするりと取手は離れ、扉が開く。
「日向…まだいたのか。」
扉が開いたのは部長が外から開けたからだった。
「まだってなんですか。迷惑でしたか?」
迷惑だったのなら、すぐに帰りたかった。
部長に煙たがられるのは嫌だったからだ。
「迷惑なわけないだろう。…帰るのか?」
少し寂しそうな表情を部長はした。
「いえ、コーヒーを買いにいこうと思ってただけです。部長とお話したくて待ってました。」
私がそう言うと部長は玄関に入り扉を閉めた。
「コーヒーならキッチンにある。とりあいず、入れ。」
そう言って部長は靴を脱ぎ、リビングへと入っていった。
私はそれを追うようにリビングへと戻った。