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Diable Patron

第5章 一晩の過ち。


今日も私は残業中。



急ぎでもないのに、部長に仕事を任されるいつも通りの内容。



そしてその少し離れたところで同じ内容の仕事をこなす部長。



光景としては何らいつもとかわりない。



変わったことと言えば。



[この空間、時間、悪くない。]


そう思っている自分。




そして「今日は終わったらうち飲みに来るか?」とか言い出す部長。



あの一件から二週間。



いろいろと変わった。



部長は残業後「うち、飲みに来るか?」とさっきのように誘ってきたり「いい店見つけた。行かないか?」といってくるようになり。


私は私で「あ、いきますいきます!」とか、「へぇー。行ってみましょうか。」とか返事をしているし。



完全に数週間で[飲み友達]という謎の関係になってしまっている気がする。



最初は「愚痴聞いてやるよ」といわれいったがそのあとはただの「残業後の飯」になり、現在に至った。





そしてもうひとつ変わったことがあって。



[好き、かもしれない。]


そう思う自分がいること。




そしてそれが恐らく原因になって新しい部屋を探すのが億劫になっていること。




[部長の部屋、間借りするの悪くないかもな。]



今はそう思っている。



いろんなことを考えながらも私は黙々と手を動かす。



カタカタカタカタ



二台のPCからその音だけがこの空間に鳴り響く。




それだけであればいつも通りだ。



けど今日はデスク脇に部長がおすすめしてくれたオレンジジュースがあった。



『これ、やるよ。美味しいからよかったら飲め。』



そういって柄にもなく微笑みながら渡してくれた。



差し入れをくれたということだけなのにすごい嬉しくなった。



これは仕事仲間として嬉しいのか、彼が好きだから嬉しいのか。



私はまだこの区別がつかなかった。
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