第5章 不器用な優しさ
歳さんから返事の手紙がきた。
京の様子と、皆の変わりない様子が簡潔に書かれていて。
最後にひとこと『心配するな』とそう書かれた手紙だった。
「…何これ…自分のこと、『心配するな』だけじゃない…」
全くもう、と苦笑をこぼして。
でも、そのひとことに自然と笑みが浮かぶ。
―心配するな。俺は何一つ、変わっちゃいねぇ。
ただ真っ直ぐに、歩いているから。
そんな風に言っているような気がして、少し安心する。
「おノブさんも心配していたし、教えてあげよう」
鬼副長のうわさに心配していた多摩の人々にも、大丈夫だと伝えようと思った時、
「お久しぶり!」
「おノブさん!」
今まさに会いに行こうとした、歳三の姉がやってきた。
「歳三から、兄弟子の小島さんのところへ手紙がきてね。それを伝えようと思って…」
嬉しそうに笑うおノブさんに、安堵する。
多摩の人々にも心配ないと伝えたかったのだろうと、『鬼副長』の優しさに思わず笑みがこぼれた。
「それでみんなで手紙を読んだんだけど…まったく、内容がひどいのよ!」
「…内容がひどい…?」
呆れたように言うおノブさんの言葉に首をかしげると、彼女はそうなのよ、と再び口を開く。
「あのお馬鹿、『報国の こころわするる 婦人哉』なんて書いて送ってきたのよ!」
「………はい?」
思わず、目が点になる。