愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第1章 愛月撤灯
雅紀side
あれほどまでに快楽に打ち震えていたというのに、うって変わって頬を染めて、それを恥じらうとは‥‥
どこまで私を翻弄しようというのだ‥。
時に幼女のように微笑み、瞬く間に妖艶さを纏って‥
聖女のように眠る君にでさえ、私の心は掻き乱されるばかりだ。
「本当に‥どうして君はそんなにも私の心を乱してしまうのか‥。」
月明かりしかない静かな寝台の中で、憂いを含んだ瞳を私に向ける智は、いつかみた白い百合のように気高く美しい。
私の頬にしっとりと触れる、花弁のように白い指先を取り、唇を寄せる。
「それは‥僕が雅紀さんを‥貴方を好いてしまったから‥。愛されたいだなんて‥邪な想いをいだいてしまったから‥。お優しい貴方は僕を見捨てることなんてできなかったんでしょう?」
ふるりと濡れた瞳を揺らして‥
赤く濡れた唇を震わせて、甘くしおらしい言葉で私の心を擽ぐる。
「ああ‥なぜ分かってくれないのだ‥こんなにも愛おしいと思っているというのに。憐憫の情で君をこの腕に抱いたことなどないのだよ‥」
花弁を撫でるが如く、美しい指‥そしてその先に唇を這わせていく。
その度に、ああ‥と艶めく唇から洩れる吐息に、また私は身体の昂りを感じてしまう。
「本当に‥?雅紀さんは‥こんなにもいけない僕を‥‥」
欲情の焔を微かに灯した瞳で私の唇を追い、小さく身体を震わせる。
君の溢す蜜は、何よりも甘い‥
美しい白百合の蜜は、私を後戻りできない甘美な時間(とき)へと誘う。
「わからない子には‥何度でも教えてあげなければならないのだな‥。私がどれほどまでに愛おしいと思っているのかを‥」
「そんな‥‥」
言葉で抗いながらも狂おしいほどの快楽に身を落としてゆく君に
「美しい花は愛でられるために在るのだということを‥」
‥私が教えよう