愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第7章 掌中之珠
どこからともなく聞こえてきた小鳥の囀りと、朝の陽射しに瞼を持ち上げる。
目の前の見慣れない景色に、一瞬自分がどこにいるのか分からなくなって、視線を巡らす。
あ、そうか‥夕べは雅紀さんのお宅に‥‥
隣で穏やかな寝息を立てる雅紀さんの寝顔に、一瞬胸が跳ね上がる。
俺は雅紀さんを起こさないように、腰に回った腕をそっと解いて身体を起こした。
えっ…?
俺‥、どうして‥‥
何も纏っていない身体に動揺してしまう。
「ね、寝巻は‥。あっ‥、あんな所に‥‥」
床に無造作に脱ぎ捨てられた寝巻に手を伸ばす。
でも寸での所で届かず、俺は仕方なく寝台を抜け出すと、慌てて寝巻を肩に羽織り、その場にぺたりと座り込んだ。
「俺‥、雅紀さんと‥‥」
肌に残る痕跡を指で辿ると、その時になって、急に恥ずかしさが込み上げてくる。
「それにあんな夢まで‥」
熱を持ち始めた顔を両手で覆った。
「ほお‥、それはどんな夢だったのかな?私にも聞かせてくれないか?」
不意に背中から抱き竦められ、俺の心臓が飛び上がる勢いで跳ね上がった。
「…起きてらしたんです‥か‥?」
「君があまりに可愛らしくて、すっかり声を掛ける機を逃してしまってね」
熱を持った顔で肩越しに振り返ると、まるで鳶が餌を攫うかのように、俺の唇が雅紀さんの唇に奪われた。
「あ、あの‥っ‥」
「く、くくく‥、全く君は忙しい子だ。顔を赤くしたり青くしたり‥」
床に尻を着き、軽々と俺を膝の上に乗せてしまう。
雅紀さんにかかったら、俺なんてまるで子ども扱いだ。
「さあ、今日はどうして過ごそうか‥。和也の希望を聞きたいところだが、先ずは朝食を済ませることが先決かな?」
掻き合わせただけの寝巻の上から、俺の腹を雅紀さんの手が撫でる。
もう‥、聞かれてないと思ったのに‥
「どうする?食堂に行くかい?それとも和也さえ良ければここに運ばせるが‥」
雅紀さんの少し癖のある声が俺の耳を擽る。
「俺は‥雅紀さんと二人きりがいいです‥」
「良いだろう。では少し待っておいで?」
俺を膝から下ろし、軽々と抱き上げると、寝台の端に下ろし、雅紀さんは部屋を出て行った。