第8章 素晴らしき世界 M×N
「ねぇ」
俺は気になっていたことを聞いてみることにした。
「ここ、部活のランニングコースなんだけど…キミの姿をさ、時々見かけるんだ」
みるみるうちにあの人の白い肌が、赤く紅潮していく。
「ちょ、ちょっと。具合でも悪い?」
肩に手を触れると、益々真っ赤になった。
「はぁ…もうアンタさぁ、察してよ」
「えっ?」
そう言われてもなぁ、よくわからないんだけど…。
「あはっ。よくわからないって顔してる」
あの人はそう言いながら肩を竦めた。
「うん…じゃあさ、考えてる間にさ、名前聞いてもいいかな。俺、松本潤」
「松本潤…潤くんか。俺は二宮和也。ニノって呼んでよ…ってあれ?潤くんどうした?」
俺はあの人…いや、ニノから普通に自然に“潤くん”呼びされてビックリした。
“潤くん”
うん、なんかいいな。
「潤くん、ニヤニヤしてる」
「マジ?」
だってさ、仕方ないよ。
ニノから“潤くん”なんて、嬉しいというか擽ったい気持ちなんだから。
「はぁ…。俺もさ、潤くんみたいに野球してた時があったんだよね、中1までだけど」
ニノが体育座りをして自分の両手を眺めながら、ボソッと呟いた。
「えっ…?」
ドキン…
ニノの横顔が儚くて、さっきまでとは違う痛みが俺の胸を走ったんだ。