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rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第35章 the price of choice



『ハ…ッ。じゃあ、約束だな』

『ッ…、ん……』


昼食に彼が所望した食事は肉類だった。

もっとも、まだ明るい時間……昼時をまわった頃というのもあってか、それを気軽に摂れる店で構わないと口にし、シルバーは適度な場所を歩きがてら見つけていた。
名無しは特に異論もなく、シルバーについてゆくだけだ。
入店後は同じものを頼み、同じものを飲み、あとはまともに話でもできれば上等であろう。

別にシャワーの流れる元、交わされた言葉が今までになかったものでも、名無しの態度は今までと変わらない。
本音は違えど、少しの怯えに、少しの吃り……こたえは簡単だ。

恋人同士になったわけじゃなかったのだから――。


『……』


食事を終えて退店すると、ホテルまでの道で偶然見つけたデジタルサイネージがあった。

ビジョンに映っていたのはスポーツブランドのよくある広告だったけれど、時折割って入るニュースや情報が名無しの目に留まる。

地域が同じだった所為か、その日あったスポーツのデイゲームの結果が流れていたなかで、ストバスのそれも小さく出ていた。


名無しは、シルバーを欠いたことで恐れていたような敗北がチームに齎されなかったことに素直に安堵し、それを自然と口にした。
そんな彼女の頭をポンと叩き、途中寄っていた、カフェのコーヒーを名無しに手渡すシルバーの表情は妙に勝ち誇っていた。


名無しはそのとき、改めて早朝の自分の愚行を恥じ、同時にシルバーの堂々とした表情に、胸をどきどきとさせていた。


なにより、チームがホテルに戻ってくるより前にここを離れようと提案されたことも嬉しかった。

チームメイトはもとより、あの男と顔をあわせずに済むことの、どんなに気持ちが楽だったか……。


コーヒーを片手に部屋に戻るまで、名無しは黙ってシルバーの服の裾をきゅっとつかみ、その道のりを歩いた。


頬は、薄らと赤らんでいた―――。



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