第34章 wrong step on the stairs8

「私は……！んん……は、ァ…ッ」

「あーあー…もういいっての、そういうのはよ……やっぱ身体で分からせとくか。オレを惑わせるような悪いビッチちゃんには」

「っ……や、ぁ…ア……！ぃ……」

「分からせついでにもうひとつ教えといてやるよ…。おまえが望むならな、オレは何度だってゲームよりおまえを選んでやるぜ？」

「…ッ……」

「けどおまえはお利口チャンだろ……んなコトはしねえよな？だからそんな追いつめられたカオしてやがるんだ……たった一回、オレを呼び止めただけでよ。ハッ……可愛いヤツめ」




シルバーの厚く大きな唇が名無しのそれを覆うと、時折挟むように食まれ、弄ばれた。
まるで引っ張る感触を楽しんでいるかのようで、ふざけた所作に見えたなか気になったのは、いつになく彼の目が真剣だったことだ。

冷やかしにも似た見下したようなシルバーの瞳や表情といったものを名無しは知っていたし、だからこそ逆に真面目な面が怖かった。

いつものようにからかって赤子の手を捻る用に、身体にもいつもの凌辱を与えてくれれば、何も考えずに快楽のことだけ考えられたであろうに……。

名無しはそこで、いつのまにか彼女が先刻まで望んでいたけれど出来なかった、シルバーと向き合うということが、この場を以って実現していることに気付いた。

たとえたどたどしい言葉ばかりが並んでいても、視線を重ね難くしていても、自分は確かに彼の声を聞いており、そしてその真意を受け止めていた。

逃げずに、抗わずに、身体に這わされた大きな手を掃えなかった目前の事実が、動かぬ証拠だった。