第5章 優しくて意地悪
「ちょ、ちょっと!!何、大笑いしてるんですか?!」
「いや・・・ははは・・・わるいわるい・・・はは・・・」
笑いながら宗介さんは私の頭を手でぽんぽんとしてくるけれど、今はその行動が火に油を注いでいることに気付かないんだろうか。
「い、いつまで笑ってるんですか!普通、か、彼女が困ってたら、優しい彼氏なら一緒に困ってくれたりするんじゃないですか?!」
「ああ、そうだな。困った困った・・・はは・・・っはは・・・」
全然困ってるように見えないし、一体この人はいつまで笑ってるんだろう・・・
「っはは・・・はは・・・腹痛え・・・笑いすぎて涙出てきた・・・」
「そこまでですか?!!」
「・・・おい、怒るな、ヒカリ」
「お、怒りますよ。あれだけ笑われたら・・・」
結局今は、私が手すりに、宗介さんがそのすぐ近くのつり革に掴まる、という形で電車に揺られている。
「ちっこいちっこいとは思ってたけど、そこまでちっこいとは思ってなかったんだ、わりぃ・・・はは・・・」
「・・・・・・もう知らない」
・・・何回もちっこいって言わないでほしい。そしていつまでも思い出し笑いしないでほしい。もう今日は口きかないし、バイバイのぎゅーもキスもしない!
「なあ、ヒカリ」
「・・・」
「だったらここ・・・来ればいいだろ」
「・・・へ?!」
宗介さんが顎で指し示す場所に、私は目を丸くした。だって、そこは・・・
「俺の腕、掴まっとけばいいだろ」
「い、いえ、でも・・・」
さっき、『人が見てる』とか言ってたのに、何言ってるんだろうこの人は。しかもものすごく意地悪そうな顔をしている・・・
「ほら早く来い」
「へ?あ・・・はい・・・・・・」
なんで私も言うこときいちゃうかなあ。口きかないなんて決めたくせに。それに、並んで歩く時だって腕を組んだことなんてないのに・・・
「ほら」
「は、はい・・・し、失礼します・・・」
恐る恐る宗介さんの腕にしがみついた。私の腕とは違って、太くて逞しい腕に。
「お前・・・顔真っ赤」
「へ?!だ、だって・・・」
「っは!」
私の顔を見て噴き出す宗介さん。本当にこの人は意地悪だ。だけど、その笑顔にドキドキさせられてるなんて。
「・・・優しいだろ?お前の彼氏」
なんて甘い声が降ってきて、多分私は耳まで真っ赤になった。