第22章 すてっぷあっぷ? その2
とても幸せな夢をみていた気がする。嬉しくって飛び上がってしまうような種類の幸せじゃなくって、穏やかで心がぽかぽかとあたたかくって少し泣きたくなるような、そんな幸せな夢。
風邪をひいている時にみる夢って、たいていどこか怖くてうなされてしまうような夢ばかりなのに、今日はどうしたんだろう。でもよかったな、だってそういう時って目が覚めた後、嫌な気分をずっとひきずっちゃうし、それに汗だくになっちゃって着替えるのが大変だもん・・・なんて、夢の中なのに私はそんなことを考えていた。
夢と現実の境が曖昧になって、ああもう目が覚めるんだなって思った時、私の瞼がゆっくりと開いた。
「ん・・・」
まだ頭がぼんやりとしている。確か私、風邪ひいて学校休んで寝てて、それで・・・そうだ。宗介さんがお見舞いに来てくれたんだった。宗介さん、ちゃんと私が寝るまで側にいてくれたな。でももう帰っちゃったんだよね・・・さみしいな・・・・・・あれ?でも手がなんか・・・・・・
「・・・お、起きたか。よく寝てたぞ、お前」
「・・・宗介さん?・・・」
私、まだ夢の中にいるんだろうか。宗介さんの声が聞こえる。かなりぐっすり眠ってしまったから、宗介さんがまだここにいるなんてありえないのに。
だけど、私の手に伝わるこの大きくてごつごつした感触って・・・
「・・・へ?え・・・宗介さん?!本物?!」
自分の手の方に視線をやる。すると、寝る前とまったく同じように、私の両手の間に宗介さんの大きな手があった。
「本物に決まってんだろ?・・・はっ、なんだよ。寝ぼけてんのか?」
聞こえる声は紛れもなく宗介さんのもの。そして、視線を上にあげるとそこには少し笑った顔の宗介さんがいた。私が寝る前と同じ、ベッドに腰掛けた格好で。
「な、なんで?なんでまだここに・・・」
「なんでって・・・ヒカリに手、握られちまってたし」
部屋の時計に目をやると、たっぷり1時間半ぐらいは時間が経ってしまっていた。その間、ずっと宗介さん同じ姿勢でこうしててくれたの?
「そ、そんなの、どかしちゃえばよかったのに・・・」
強い力で握ってたわけじゃないし、もしそうだったとしても宗介さんの方が力強いんだから、無理にでもひきはがしちゃえばよかったのに。
・・・なんで?・・・なんで・・・