第10章 好意
貴方から貰える約束が嬉しい。
それが例え守られなくてもいいと思う。
その約束だけで嬉しいのだから。
「暑ぃ・・・優仁、ちょっと休憩してあっちいこうぜ?」
「え?うん」
川に作った即席の生簀、その中に釣った魚を入れて大野君について行くと木陰に丁度座れそうな大きな石、二人で座り靴を脱いで足を川の中に入れる。
「冷てー!!ハハハッ」
「クスクスだね、智君平気?」
「え?なにが?」
「だって智君って足が神経過敏でしょ?」
「へ?」
「太股から下の神経が過敏だから、そこの刺激が人より過度になるのはそのせいだと思ってた」
「へぇ・・・けど、それあるかも」
「人によって、耳とか額とか色々あるからね」
「・・・・優仁は?」
「?」
「優仁はあんのそう言う場所」
「わッ・・ぼ、僕?僕は・・・・ウーン・・・如いて言うなら耳かな?」
「ふーん」
「あ、今、悪い顔したよ。ダメだよ?」
「ハハハッ」
こんな風にふざけてじゃれ合うのは楽しい。
バシャバシャと水が跳ねる。
木陰、石の上に横になると周囲が静かで穏やかな気持ちになる。
だけどドキドキしているのはやっぱり近くに感じる彼の存在のせい。
「よし!!やるか!!」
「うん!」
並んで二人で川へと竿を振る。
凄く穏やかな気分。
川のせせらぎ、木々の音、綺麗な空気。
こんな風に彼の日常に関われる事が嬉しくて仕方がない。
来年の今頃にはもう彼とは一緒にいられない。
生活環境が変わり、こんな風に遊ぶなんて滅多にできなくなる。
だったらやれる事をやっておきたい。
その時になって後悔しても遅い。
やりたいと思った事はやってみよう。
「優仁引いてる」
「へっ?」
「竿!引いてるぞっ!!」
「うわっ!?」
言われて慌ててボーッとしていた意識を正気に戻してリール巻くが硬くて巻けない。
この世界に来て自分の身体能力が以前の自分よりは桁外れに良くなっているのはココで生活して暫くして気が付いた。
同年代の子供よりはバズ抜けて良いと思う。
そんな自分が力負けしている。
子供の力だから仕方ないとは思うけれど、それでもこんなに巻けないものなのか!?