第1章 皆でお祝い♪ ゼノ様バースデー!
コン、コン。
不意に部屋にノックの音が響き、ゼノ様がいらしたのかも!と、一瞬ドキリとして、3人してドアの方に険しい表情を向ける。
「あ、あのぉ………お忙しいところすみません………」
ノックの主はメイドさんで、私達のただならぬ様子に、申し訳なさそうにキッチンに食材が届いたと知らせてくれる。
早くゼノ様にお会いしたいと思いながらも、今ここに来られたらそれはそれで困る、なんて………。
その矛盾に気づき、思わず頬が緩む。
せっかくだから、内緒で準備をして驚かせたい。
そして………喜んでもらいたい。
なんだか、今がとても貴重で素敵な時間を過ごしているのだという実感が湧いてきて、心がウキウキしてきた。
途中の飾りつけを手早く済ませ、キッチンへと向かう事にする。
ユーリがドアを開けてくれて、私が先に部屋を出てユーリが後に続く。
振り向くと、アルバートはまだ横断幕を凝視している。
やれやれ、といった調子で肩をすくめながら、ユーリが言う。
「アルー、そっち終わったらキッチン集合だよ?なる早で、ね!」
「なっ………?な、なる早って何だ?貴様、言葉の使い方がなってない!そもそも………」
「あー、はいはい、時間ないんだからさ。なるべく早くって事!わかった?じゃ、巻いてねー」
ユーリはそれだけ言うと、ドアを閉める。
「………巻く?なっ………何を巻くんだ?………この横断幕か?」
残されたアルバート、1人横断幕を見つめ、首を傾げる。
しかし、はっと思い立って横断幕を見比べる。
「どちらが相応しいだろうか………」
眼鏡のつるをクイッと押し上げると、再び思案し始めた………。