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ハル

第5章 花見


彼が久々に山から降りてくる。それなのに
わたしも、本当に時間なくて、
ほんの、数時間しか会えない。

それでもいいから会いたい。

仕事は、休む。つーか、半休。
午前中に、色々片付けて、帰る準備。
今日は未だ、ボスの顔見てない。あの人は会社に泊まってるか、夕方来るから今日は大丈夫。
折角のデートなんだからね、絶対帰る。
何週間ぶり?随分会ってない気がする。
帰り際のトイレの鏡に映る私は頭はボサボサ、化粧落ちまくり。GパンにヨレヨレTシャツ。
こんな姿でなんて絶対会いたく無い。
早く帰らなきゃ。

私の家と彼の実家の中間地点よりもう少し北寄り。
大阪で桜の名所と言えば大阪城公園。
未だ、日が落ち切らない時間に待ち合わせ。
彼の姿が見えるとドキドキが止まらない。
やっと会えた。声だけじゃなくて、生身の彼に。
「元気にしてた?」
「色々キツくてちょっと痩せた。」
そんな話をしながら歩き出す。
本当はギュッて抱きつきたい気持ちをぐっと堪えて、彼の服の袖口を掴む。
本当は腕組みたいけど、ヒール履くと私の方が背が高いんだよね。だから、腰に手を回すんだけど、今はちょっと無理。あー、手繋ぎたい。無理だー恥ずかしすぎる〜。顔見れないよー。あー、なんて愛しいんだろ。この頸の感じ好きだわー。法衣着るとほんと綺麗なんだよなー。

屋台で、ビールとおつまみを調達。人混みの中ビール片手におつまみを持ちながらフラフラ歩いてたら、ぐっと腰を引き寄せられる。
「ほら、逸れるから、こっち来いって。」腰に回された手でがっちり捕まえられる。
この、密着感がドキドキする。酔って無いのに、絶対顔が赤い。

「桜もすごいけど、人もすごくない?」
「このザワザワした感じが久しぶりな感じがする。あっちは静かだしなぁ。」
「会えなくて寂しかった?」「あぁ。」ついうっかり返事したのが恥ずかしかったのかあっち向いて毒づく。
「あほか!忙しくてそれどころじゃなかったわ!」
「今日も急ぎで戻るからあんまり時間が無い。ごめん。」
少ししか会えないのは、悲しいけどわざわざここまで会いに来てくれたと思うと、嬉しい。
人の流れに沿って、ゆっくり歩く。グループで宴会してる所も通り過ぎて、名所の桜も通り過ぎて、ちょっと人もまばらになって来た。
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