第2章 うしろのしょうめんだーぁれ
「なぁ……ゴン」
抑えた声で、背後に呼びかける。
ゴンも緊張した雰囲気で振り返った。
出来る限り気配を殺す。
こういうときは何よりまず冷静さを失ってはいけない。親や兄貴達からうっとおしいくらいに言われていた事を自然と実行していた。
だが……
オレは心の中で舌打ちする。
すでに心中穏やかでは無かった。
敵意は無い、ということは判り切っているんだ。
でも、冷や汗が体を伝う。心臓が危機的な警報をうち鳴らしている。
あいつの気配がこの空間すべてに存在しあらゆる方角からこちらを監視するそのプレッシャー、だから真正面から対峙し同時に背後からも気配で撫でられる。――不気味さ。
ゴンも警戒に息を殺しているがオレほど切羽詰ってない。
お気楽なところで生まれ育ったんだな。ちょっと顔見知りになったからって警戒を緩めやがって。
こんな異常気配……もしほんの少しでも殺意が含まれていたら、最初の0.5秒で心臓を貫かれててもおかしくない。