第2章 変わった出来事
(キタコレ!)
反射的に及川はそう思った。
「うん、ちっちゃい頃、一緒に遊んでたよね」
「そうそう!覚えてたんだ、私もさ、何か見覚えある人いるなって、思ってたんだ」
目の前の少女・・・リオは花のように笑顔を見せて、言った。
「昔、よく一緒に公園で砂遊びとか、鉄棒とか、色々したよね。あ、でも小学校はいなかった・・・よね?」
一度思い出した断片的な記憶は、ゆっくりと糸をたどるように過去を振り返り、リオと過ごした時間を思い出させていく。
「うん、私立の学校行ったからね。お受験ってやつ。あれ以来会ってなかったね」
では、彼女とは何年ぶりの再会だろうか・・・
軽く、15年ほどだろうか?
随分と時間が開いているなと思った。
しかし、それでも彼女を思い出させたのは、
彼女がやはり、昔の面影を残しつつ、成長していったからだろうか。
幼い頃はあまり興味が無かったというか、分からなかったが、
今、目の前にいる彼女は、結構な、美人ではないかと思った。
「徹くん、今は大学生?」
「うん、そうだよ。〇〇大学3年生。四月からは、4年生だよ」
「そうなんだ!じゃあ、就活忙しくなるんだね」
「そうだよ〜、めんどくさいことこの上ないよ」
リオは何やってるの?・・・と、尋ねようとした時、丁度、次の駅に止まるところだった。
「あ、俺、ここなんだ。引っ越してないからわかると思うけど」
「そうなんだ。私の家はちょっと引っ越したから終点の所なんだ」
そっか、と行って及川は立ち上がり、リュックを背負う。
少しばかり電車が揺れて慌てて吊革を掴むと、リオを見下ろして、言った。
「また、会えるといいね」
懐かしい顔の彼女は、綺麗な笑みを浮かべ、
「きっと会えるよ」
そう言った。
それから、またね、ばいばい、をお互い言い残して、及川は地元の駅へ降り立つ。
間もなくリオを乗せた電車は発車する。
ドアがしまり、動き出していく時、ちらりと及川は彼女を振り返った。
すると、リオも、及川の方を向き、ヒラヒラと手を振っていたのが見えた・・・