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Dearest〜最愛の君へ〜

第19章 愛しい人へ





タッタッタッ


遠くの方で足音が聞こえる。
病室の前の長椅子に座る及川は呆然としながら、その足音が近づいてくるのを感じた。


「及川さん!!」


ゆっくりと、自身を呼ぶ方へ振り向く。
そして、その人物を視界に移すと、荒い息をした国見が立っていた。


「国見ちゃん、俺・・・」

何から話せばいいのか、わからない。
そんな顔をしていると、国見は及川の側までやってきて、そっと、優しく肩に手を置いた。


「え・・・?」

「怪我・・・してませんか?」


優しく自分の身を案じてくれる後輩。
じんと心が暖かくなるが、及川は大丈夫、とだけ呟いて申し訳なさそうに目を伏せた。


「部活終わって連絡見てから、急いで来ましたけど・・・」

どっかりと及川の隣に腰を下ろす。

「ミオの様態は・・・?」


あれから、すぐに、救急車を呼び、この病院へ駆け込んだ。

すぐにミオは手術室へ運ばれ、及川は国見に連絡をした。

部活後、及川からの連絡をみたのが、手術が終わった直後だった・・・


「ガラスで切った傷はあるけど、骨折とかは無いみたい・・・でも」


及川は組んだ手を白くなるまで握った。



「ミオ、目、覚まさないんだ・・・」


あの時から・・・ずっと眠ったまま・・・
一向に目を覚まさない。


「担当医が・・・今夜が、峠だって・・・」

「そんな・・・っ」



"英くん・・・"


(あの時・・・あんなに笑顔でいてくれたのに・・・)



この病室の向こうでは、今も目を覚まさないミオがいる。



「ごめんね、国見ちゃん。ミオのこと、よろしくなんて言われておきながらさ・・・」


及川の声は、震えていた・・・ーーー


「俺、リオもミオも・・・2人とも幸せにできなかった・・・!大切な・・・大切なミオが俺の代わりに・・・っ」


犠牲になった・・・


あの時、本当なら俺が、死ぬ筈だったのにーーー・・・!










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