第16章 生まれ変わるなら私は
それから、また暫くの月日が流れる・・・ーーー
今夜は月が綺麗だ。
秋の風が肌を撫でた夜、及川は月を見上げながら思った。
手を伸ばせば、届きそうな月・・・
布団で横になる及川は、背中合わせに寝転ぶリオに話しかけた。
「俺、生まれ変わったら、月になりたい」
「え〜、なんで・・・?」
背中で笑う声が聞こえる。
「だってさ?月だったら、みんなの事見てられるじゃん。今日、あそこの家、カレーだ、とかあそこのカップル喧嘩してるよ〜とか。俺に全部バレバレなの。楽しいだろうなぁ〜」
「ふふ、ほんと、面白いこと考えるよね、徹くんは。でもいいかも」
リオも及川と同じように優しく照らす月を見上げた。
みんなが見上げる先が自分・・・
きっと、みんな忘れないだろう。
こんなに光照らしてくれる存在なら・・・
「ね、リオは?」
「ん〜?」
「俺の魂を迎えたら、来世で生まれ変われるんだよね?何になりたい?」
生まれ変わったら・・・
「んーーーそうだなぁ・・・」
リオは暫く考えて、そして口を開いた。
「花、かな?みんなに可愛いって言われるし。あ、でも鳥でもいいかも、大空を飛んでみたい!犬も楽しそうだよね、あんなに速く走ってみたいし。蝶も捨てがたいなぁ〜花の蜜とか美味しいのかな?」
ぽんぽんと浮かんでくる、来世の自分。
楽しそうに、話すリオの方を、及川は寝返りを打って向いた。
するとリオは、鼻先が触れ合いそうなくらいの距離にいて、
及川を優しい眼差しで見ていた。
「そして、何度でも・・・徹くんのことを好きになる」
どんなものに生まれ変わっても、
きっとこの想いは変わることはない。
何度でも、何度でも・・・
彼女が口にした想い。
薄々気づいてはいたけれど、はっきりと告げられると、胸の鼓動が激しさを増す。
「リオ・・・」
「あ、でも!やっぱりなるなら、人かな?職業は歌手になって〜」
リオは自身の胸に手を当てて、柔らかく微笑んだ。
「いつでも・・・徹くんのことを想ってうたいたいな・・・」