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妖狐の籠

第4章 夏


梅雨が明けて快晴の日々が続く

雨続きの鬱陶しい気持ちが晴れるように

そして、期末テストを終えて

残るは数日後に控えた夏休みーー


「千夏!テスト終わったよ!
今日は遊ぶでしょ?」


山の近くに住んでいる私は

毎日数時間かけて高校へ通い始めた


「もちろん!みんなも一緒なの?」


「そうだよ〜!
千夏がいるよって言ったら
女子も男子もみんな集まるんだから!」


「千夏!どこ行くか決めろよ!」


テストが終わった開放感と

これから訪れる夏休みで

みんな気分が高揚している

もちろん、私も例外ではない


「えっ…!? 私が決めるの?
前もそうだったよ…?
私はどこでもいいから
みんなが決めていいよ」


「も〜千夏ったら!
千夏は人気者なんだから
もっとみんなを仕切ってもいいんだよ!」


仲のいい友達はこう言うけども…

とても明るくて

フレンドリーな性格ではない

必要最低限しか会話しない

なのにどうしてこうなったのか…


「…千夏って、学校一の美人だよな…
ずっと黙ってる人かと思ったら
話してみたら気さくでさ…
しかも気遣いもできて優しいから…」


「ん?何か言った?」


「…! なっ、なんでもねぇよ!」


色んな人からジロジロと視線を感じる

小学一年生から中学卒業までは

ずっと同じ人しかいなかったし

今みたいに、クラスに40人もいない

だから、ジロジロ見られる

なんてのは感じなかったのに…



教室はガヤガヤとしていて

少し大きな声で話さないと聞こえない

こういうのは慣れていない

そもそも大人数というのが好きではない


…家に帰りたいな



「ねぇ、千夏ちゃん
この後みんなと遊びに行くの?」


クラスでもかっこいいと称される

男子が私に話しかけてきた

…私はそうは思わないし興味が無い


「あー… なんかそうみたい」


「あんまり乗り気じゃないんだね
じゃあさ、俺と2人で遊びに行かない?
美味しいお店知ってるからさ」


いや、そういう訳でもないよ…

私なんかより、他の子を誘ってよ…


「ほら、行こうよ鞄持つよ」


えっ…!? 勝手に持たないでーー





と、その時

教室の騒々しさが女子特有の悲鳴に変わる
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