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妖狐の籠

第2章 烏


ある日、統である『天狗』様が

俺ら全妖怪を集めた


「結界が少し乱れている
このままでは危険だ
…この中で則を無視した者はいるか」


全妖怪がざわつき始める

そして、頭の中で過去の記憶が蘇る

平安時代のあの記憶だ


「右烏、少しいいかい」


俺に声を掛けたのは『狐』の族の1人

人混みを抜け出して

『狐』の族の1人と俺の2人だけになる


「俺になんの用ですか」


「狐珀は見ていないかい…?
暫くここに戻ってこないんだ」


狐珀は頻繁に『人』の世に遊びに行く

それは俺も知っている


「俺もここ暫くは会っていませんね
…もしかして、『人』の世に?」


「ああ、そうかもしれないんだ
衣食住も『人』の世なのかもしれない」


狐珀ならそれはやりかねない


「もしかして、結界が乱れたのも
狐珀の可能性もあるって事ですか」


「そうだ だから、右烏が
狐珀の様子を見に行って欲しいんだ
私達『狐』が行っても
逃げられるだけなんだ」


俺と狐珀は数少ない友だ

そもそも妖怪は

あまり子孫を作ろうとしない

『人』の世の基準でいうなら

妖怪のそれぞれの族は

数百年に1度、赤子が産まれる


俺と狐珀はたった10年違いだ

歳が近いこともあり

産まれた時からの仲だ


「いいですよ
とりあえず、俺が狐珀の様子を見てきます」


その後

俺はやや乱れている結界から

狐珀がいるであろう『人』の世へ
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