第27章 茶屋にて

「そんなにガシガシ混ぜちゃだめだよ」

「は、はい！」

葉月は茶屋で春から、餡の作りかたを教授されていた。

『うー、餡作りがこんなに重労働だなんて！』

葉月の作り方より繊細に丁寧に作る餡づくりに、汗だくになっていた。

「あんた、本当に餡作った事あるの？」

「あ、ありますよ。でもこんなに丁寧に作ってない、ですっ」

「どんな菓子作った事ある？」

「最近作ったのは、あんず入りの羊羹ですね」

餡作りをしながら答える。

「あんず入りの羊羹…」

羊羹の中に果物を入れるなんて聞いた事、ない。

でも、美味しそうな感じは、する。

「それ、美味しいの？」

「はぁ。秀吉様は少なくとも気に入ってくださいました。
信長様に召しあがっていただきたいから作れ、と言われ、もう一度作りましたよ」

砂糖を餡に入れ、全体重を掛けて餡を混ぜながら葉月は答える。

「織田信長様も召し上がったってことかい？」

「はぁ。たぶん…」