• テキストサイズ

あの日の君に 《気象系BL》

第5章 認識


「翔くん、頭痛いの?病院行こうか?」

「ちが…」

首を横に振ると智くんは困ったように眉を下げ、また頭を撫でてくれた。

「じゃあ、俺のせいか…
俺、翔くんの事苦しめてばかりだな…」

智くんに苦しめられてるなんて思った事もない…

ただ、智くんの事を思い出したかっただけで…

それよりも今、哀しそうな微笑みを浮かべる智くんを見ている事の方がよっぽど胸が苦しかった。

手を伸ばし、そっと智くんの頬に触れた…

「違うから…確かに泣いたのは智くんのせいだと思う…胸も苦しくなった…
でも、この感情は悪い物じゃないよ…」

智くんが少し驚いた顔をした。

そう、本来なら悪い物じゃない…

でも、ニノという恋人がいる俺にとっては、ニノ以外に感じちゃいけない感情なんだ…

智くんの頬に触れていた手を離した。

「ごめんね、智くん…もう、聞かないから…
智くんが思い出さないでって言うなら思い出さないよ…
その方が俺の為だけじゃなく智くんの為でもあるんだよね?」

智くんに哀しそうな顔をさせたくない…

思い出した訳じゃない…
でも、俺の体と心が勝手に反応するんだ…

記憶を無くす前の俺は、たぶん智くんの事が好きだった…

ううん、たぶんじゃない…絶対好きだった…

でも、今の恋人がニノで、智くんが『思い出すな』って言ってるってことは
俺、智くんに振られてるんだ…

だからニノと付き合うことにしたんだ…

そう考えれば全て辻褄が合う…

智くんは優しいから、俺にその事を思い出させたくないんだ…

きっと俺を振ったことを自分が悪いと思ってる…

智くん、何も悪くないじゃん。俺が勝手に好きになっただけでしょ?

今、感じているこの想いも含めて、二度と表には出さないよ。
/ 147ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp