第9章 (闇日)罪と罰 (僅かに傷、血表現)
あつい、吐息。
と思ったら、首元付近に硬いものが当たり、ぴたりと舌が触れ、続いて痛み。
「…っつあ、い、ちょ、きく…っ」
咬まれた、とわかった。歯が恐ろしいくらいに熱く感じる。
嫌がる私を信じられないくらいの力で押さえつけて力任せに傷をつけた菊は、私の顔を見上げると満足そうに喉を鳴らした。
「良い顔だ」
言って、血の滲んでいるであろうそこを労るように数回舐める。
這い上がる感覚に私は目眩がした。まるで熱にうかされたようだ。
駄目だ、この人には、勝てない。
足掻きなんて全て無駄に終わるのだ。
抵抗しようとずっと菊の肩を押していた私の手から、力が抜けた。それを感じた菊はまた可笑しそうに笑う。
「この程度で許すとでも思っているのですか」
「…………も、いい、色々言いたいけど、とりあえず下ろし、」
「断る。…ああ、まあ、跪き靴を舐めでもするのならば許してやらない事もないが」
そう言ってその光景を思ったのか目を細めた彼は、涙が目の端に浮かんだ私を見、ゆっくりと唇を重ねた。
甘く、柔らかく、優しい。2、3度角度を変えては舌をぬるりと入れ、耳を塞ぎたくなるような音が辺りに響く。
「んく…っふ、 ぅ」
同時に、スカートをたくし上げられ、太股を這う手。
内側を、外側を、足の付け根を、ことさらゆっくりと撫で回す。
どこまでも繊細な動きに、私は息を荒くした。
悔しい。完全に翻弄されている。
こんな露骨な飴と鞭に揺れる私は馬鹿だ。 そう思いながら大人しくしていると、ようやく唇を離した菊が言った。
「せいぜい私の下で足掻きなさい」
愛しい人よ。
2014/