第4章 (日)食欲願望腹の底(オタク菊)
「人はとっさに出た言葉こそに素が出るというもの。言葉のあやこれすなわち本音です!」
「はやまんないでよ菊!そんな簡単に死ぬなんて言っちゃ駄目だって!あとここ1階だし飛び降りても死なないから!痛いだけだから!」
そう言うと菊の身体から力が抜けた。
案外近い地面を目の当たりにして、自分の滑稽さに笑いが洩れたようで。
「…ね?だから死ぬのやめようよ。今日私がご飯作るからさ」
「それだけではこの傷心は癒されません」
「じゃあどうしたらいいのさ」
「どうにもでき……あ。…いえ、何でもありません」
「何よ」
「いいんです。大丈夫ですから」
「何。気になる。何か食べたいものでもあるの?」
「食べたいもの…まぁ、そうですね」
「作るから言って。すぐ作れるもの?」
「えぇ、まあ…いえでも…」
「何だよ煮え切らないなあ。何が食べたいの?」
「……本当に作ってくださるのですか?」
「うん。作るよ」
これで機嫌が治るならと思ったが、考えてみたら今までほとんど菊にご飯を作って貰っていたのだ。
機嫌が治る治らないを別にしても、少しくらい礼を返さないとバチが当たるというもの。
「では…」
「うんうん」
「では裸エプロンを着て肉じゃがを作ってください」
「そんなエプロンありませんうちに」
言った瞬間、私はまた菊にしがみついて飛び降りを阻止する羽目になった。
(裸エプロンはやめて)
(妥協してメイドですが)
(是非妥協してください)
(ではその中でもマイクロミニ丈を希望します)
(……)
(嗚呼やはり駄目ですよねわかっていましたよすみません大変失礼なお願いをしてしまってかくなる上は死んで詫びます!)
(あああわかったわかった着る!着るから!)
(………ふ)
2014/