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The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー

第10章 Butler ー執事ー





「……かしこまりました。
 では、レイ様。鍵をお預かり致します。」


一瞬だけ、不思議そうな表情を見せたセバスチャンだったが、
すぐにまた微笑んでそう言い、レイから鍵を受け取ると、
立ち上がって足早に歩いていく。



「……悠。
 あいつ、信用して良いのかよ。」


ザックが不機嫌そうに私に言った。
歩いていったセバスチャンの背中を見つめていた私は、
ザックにそう問いかけられて振り返る。


『……。
 っ……‼あははっ‼』


私は思わず、お腹を抱えて大笑いしてしまった。

ザックが、何とも言えない……、
不機嫌そうに顔を歪めていたからだ…。

これはもう、笑うしかない。


「……おい。
 何笑ってんだ、殺すぞ…。」

『…あぁ。
 ……ごめんごめん。』


ひとしきり笑ってから、私はそう言った。
そして、笑いで滲み出た涙を人差し指1本で拭ってから、
私は更に続けた。


『別に、ザックが信用したくないのなら、しなくていいんだよ。
 ……ただ、私と彼とは少し付き合いが長くてね……。

 私は、とても頼りにしているし、信用しているよ。』

「……そーかよ。」


『……あの日、
 彼が現れてくれなかったら…、
 きっと私は立ち直れなかった……。』



ザックの素っ気ない返答に、私は小さくそう呟いた。

……きっとその声は、ザックには届いてはいないだろう。
だが、レイの耳には届いてしまったらしく、
意味が理解できないであろう彼女は、不思議そうに首を傾げていた…………。



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