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外科医・牛島若利

第3章 オペナース


カンファレンスが終わり診療棟へ向かうチーム木兎の面々。
治療棟と診療棟を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、向かいから闊歩してきたのは、チーム牛島。

渡り廊下のど真ん中で、院内最高峰のチームが対峙する。
先頭に立つ牛島は無意識に羽音の姿を探したが、彼女の顔が見えない事にひとつだけ眉間に皺を寄せた。

「調子はどう?牛島くん」

白衣のポケットに手を突っ込んだまま、上機嫌の木兎が声をかける。

「問題ない」

そう牛島が答えると、背後にいた天童がニヤリと笑う。

「そちらはこれから?」
「まぁ軽いオペだけどね~」

赤葦と天童は仲が良くない。院内周知の事実に二口が楽しそうに様子を伺っていた。

「何してるんですか?」

部屋の片付けをし、後から来たチーム木兎のオペナース達が合流する。
長身の男たちの後ろから現れた白衣の天使たち。
普段の彼女たちはオペ用のスクラブやガウンを着ているため白衣姿を見られるのはかなり珍しい。

その姿を確認すると牛島の眉間にひとつ皺が増えた。
それを見逃さなかった赤葦が今度はニヤリと笑う番だ。
天童がチラリと牛島の方に視線を向けるが、彼は誰とも視線を合わせないまま歩を進めた。

木兎の横を颯爽と通り過ぎれば、木兎チームのメンバーが道を開ける。
そのままオペ室へ向かうものだとそこにいた誰もが思ったとき、牛島は羽音の前で足を止め彼女の頭にそっと手を乗せると優し気な視線を送った。
思わずそこにいた全員がその光景に見惚れてしまう。

「最善を尽くせ」

そう一言告げた牛島は、再び顔を上げるとオペ室へ続く廊下を歩き出す。
普段であればありえない光景に、木兎が楽しそうに目を輝かせた。

「いいね~牛島くん」

残された羽音は、院内でありえないことが起こった事実を受け入れられず顔を真っ赤に染めあげている。

「さ~って、俺たちも行くぞ~」

木兎の声に、我に返った羽音は頬を軽くパンパンと叩いて気合を入れ直す。

「ほれっ」

そう言って飴玉をくれたのは目の前にいた小見さんだった。
なんだかんだこのチームはアットホームで楽しいのは間違いないと思っていた羽音であった。
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