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外科医・牛島若利

第1章 執刀後の情事


本日最大の手術が行われる手術室。
ミヤビ総合病院の手術室は1番から12番までの12室を有し、毎日毎時間、様々な手術が行われている。
中でも外科、脳外科、心臓外科の手術は有名な医師が揃っており彼らの執刀を望む患者も少なくはない。大きな手術はギャラリー付きの手術室で行われ、関係者各位が見学できるシステムになっている。

本日の執刀を務めるのは院内でも最高峰の外科チーム、牛島医師を筆頭としたチーム牛島と呼ばれる特別編成の集団だ。
放射線技師の天童と臨床工学技士の川西が器材の準備を進める隣で電子カルテを訝しげに見つめながら何やら計算をしているのは、麻酔科医の白布先生…麻酔科医の中でも最速の計算能力と観察眼を持っている、チーム牛島の要ともいえるだろう。
そして指揮をとり、器材確認をしているのは、看護師の大平先輩。

そういう私も普段は手術室の看護師として勤務をしているのだが、今日は非番である。
非番でなかったとしても、私はあの中に入ることはない。チーム牛島に女子が入ることは許されない。
だから、こうして非番であれば少なくとも彼の執刀がギャラリーから眺められるのだから、ラッキーだったのかもしれない。

まぁ…準備時間からギャラリーにいる物好きは私だけだろうけど…。

同期の山形君がギャラリーを見上げ、私を確認すると軽く手を上げて挨拶をしてる。
それに答えて手を降れば、手術開始30分前だ。

スマートフォンに電話。
手術開始30分前の儀式……

『俺だ…』

低く安定した彼の声。

「牛島先生、今日も期待してます」
『あぁ…任せろ』

自信満々の彼の一言に私の胸が高鳴る。
牛島先生の手術は、綺麗、鮮やか、病院のエースに名を連ねる彼の手腕は一度見たら病み付きになる。
そんなマニアックな話は、友人には通じないのであるが…。

牛島先生の大手術となれば、ピーク時にはかなりの人がこのギャラリーには集まる。
病院のお偉いさん、彼のライバル達から物見遊山の医師まで様々ではあるが…。
私は入り口から一番離れた角の席に腰を降ろし、今日の主役の登場を待った。
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