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【跡部】All′s fair in Love&War

第38章 恋と戦争に手段は問わない(後編)




「…テメェ…松元、言うに事欠いて返事がそれとはいい度胸だな、アーン?」
「だ、だって!」
「それとも、俺様がこの期に及んで冗談を言うような男だと思っているのか」


その通り、跡部は、こんな時にそんな冗談を言うような事はしない。分かってはいる、けれど気が動転してしまって、何を言えばいいか分からず。


「あの、好きって言うのは、どういう…ていうか、いつから、どうしてっ…」
「今は質問は受け付けてねぇよ、返事もな」


ぐっと息を、言葉を飲み込む。


「一年間、せいぜい考えな…俺様がお前にとってどういう存在か」
「…でも、それじゃ跡部だって、一年間私がどーするか、悩み続ける事になるって事よね!」


言われっぱなしが悔しくて、何とか一矢報いようと言葉を発するけれど、いつもの含み笑いが聞こえてきた。


「…ハッ、俺様は負けると分かっている勝負は挑まねえんだよ」


いつもと変わらない不遜な物言いに、悔しいけれど負けを認めずにいられない、と察する。惚れた方が負け、なんて誰が言ったんだろう、全くその通りだ。

驚きで涙もすっかり引いてしまった、どんな表情でこんな偉そうな事言ってるの――最後に拝んでやろう、と勇んで、勢いよく振り返る、そして一瞬で、その行いを後悔した。


「あとべ、」


頬にすっと一筋、涙の跡。綺麗過ぎて、目を奪われる。真っ直ぐな視線はいつもと変わらず、こちらを射抜くような強さを持っている。

試合で負けても、泣かなかったのに、跡部が泣いている。その事実は、跡部の気持ちが本気なんだ、と私に分からしめるには充分で。何でこんなタイミングで告白なんて、と偉そうにも内心毒づいていた自分を恥じた。

跡部も、私と同じ、言いたくて、でも言えない想いを抱えていたの?



ポシェットの中のケータイが震えている。時間が無い。分かっている。自分で選んだ事の、これが報い。もう隠しきれなくてぼろぼろに泣いてしまっているけれど、やっぱり最後に覚えていてもらうなら笑顔が良くて。好きって言っちゃダメ、らしいけど何か伝えたくて――


「あとべ、」


視線が交わる。思い切り笑ってみせる、ちゃんと笑顔になってるのか分からないけれど。ぼやけて来た視界をぐっと拭って、叫ぶ!



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