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【跡部】All′s fair in Love&War

第38章 恋と戦争に手段は問わない(後編)




流暢な本場仕込みの発音で、英語の教科書を読み上げる姿に、何度見とれただろう。全校生徒の心を掴む、生徒会長のスピーチも毎回格好良かったな。持ち前の運動神経でどんな競技も難なくこなしていたから、体育の時間だってヒーローだった。


街を歩けば誰もが振り返る、長身と整った顔立ち。隣を歩くのはいつもながら気後れするけれど、でも並んで話しながら歩いていたら、いつの間にかそんな事忘れられた。


ミカエルさんの運転する車で家まで送ってもらう時間は、いつもゆったりと時が流れていた。私達の話が盛り上がった時には、ミカエルさんが少し遠回りしてくれて、気付く度に二人で顔を見合わせて笑ったっけ。


皆で寄り道したハンバーガーショップ、ゲームセンター、カラオケ、どれも初めは物珍しそうにしていたのに、いつの間にか跡部も馴染んでいて。でもUFOキャッチャーは何故か下手くそなんだよね、なんでも出来るくせに。



走馬灯のように巡る思い出、そしてぼたぼたと、皆に背を向けた瞬間落ちてくる涙。こんなに好きなのに、好きすぎて何も出来ない。たった二文字を、口に出す事さえ――




「松元」





足を何歩か進めたその時、時間を止めるような声が私の耳に届く。足を地面に縫い止められたかのように、動けなくなる。跡部の声で名前を呼ばれるのが、好きだったな、なんて考える――タイムリミットが迫っているのに、泣いているから聞き返すことも出来ず、ただ言葉の続きを待っていた。

沢山の人が居る空港のロビーの中、まるで二人きりの様な、不思議な感覚。今ならどんなに小さくても、跡部の声なら聞き逃さない自信がある。

永遠のような、一瞬の様な、そんな時間――





「好きだ」




「…うっそだぁ」



たっぷりの時間をかけて、私が跡部に返せた言葉は、何とも間の抜けた物だった。


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