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マトリちゃんの恋愛事情*

第2章 マトリちゃんと雨と傘


無事に資料を届け、戻ってきた道を歩いていた。すると、頬に雫が落ちて、瞬く間に雨へと変わった。

泉「よかったぁ、一応持ってきておいて」

私はバックをがさごそと漁り、折りたたみ傘を取りだした。人混みではなかったら走って帰りたい所だが、こんな所で盛大にコケる可能性もなくはない。

泉「あとヒールだしなぁ」

はぁ、とため息をついた時。ふと目の前に腰の悪そうなお婆さんが大きなビニール袋を下げて歩いているのが見えた。さらに傘を持っていないのか、急ぎ足だ。

泉「あの、良かったら荷物お持ちしましょうか?」

気がついたら声をかけていた。お婆さんは少し申し訳なさそうにしていたが、言葉に甘えてくれた。家が近くだというのでそこまで荷物を持った。

お婆さん「お嬢さんありがとうね、お礼に何か食べていくかい?」

泉「あ、いえ、お心遣い有難うございます。少し急いでるので大丈夫です」

親切なお婆さんはなかなか引き下がらず、少し待っててと言われ待っていると小さな和菓子を貰った。お礼を行って和菓子をバックに入れて外れた道から少し戻る。

泉「お節介…て、また言われちゃうのかな」

歩きながらぽつりと呟いた。そう、夏目くんにも何度も言われている。干渉のし過ぎだったり、他人のことに首をツッコミ過ぎだと。

全て悪いことではないと思う。お婆さんのように感謝して貰えることもある。しかし、夏目くんの意見だって最もだ。相手を不快にさせるかもしれないし、干渉し過ぎていつボロが出るか分からない。大きなミスに繋がることだってありうる。

はぁ、とまた深くため息をついた。くよくよした気持ちを紛らわすようにお婆さんのくれた和菓子をちらりと見るとちょうど6つあるようだった。

泉(戻ったら皆で分けよう、渡部さんもいるかな)

そんなことを考えていると、雨に混じってすすり泣く声が聞こえた。
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