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マトリちゃんの恋愛事情*

第5章 関さんと付箋


また暫くパソコンを打つ音しか聞こえない時間が過ぎて、定時を知らせるチャイムが鳴った。

夏目くんの方を見ると、とてつもなくしんどそうな顔をしながらパソコンと睨めっこしていた。

由井さんを見ようとしたが、高く積み重なった本や資料の山で由井さんの顔は全く見えなかった。でも由井さんも仕事はまだ片付いていないようだった。

案の定関さんもそうだ。渡部さんから呼ばれたり、上層部からの連絡など、普通なら倒れてもいいような忙しさだ。

関さん「泉、仕事を1つ増やして申し訳ないんだが、これも頼んでいいか」

ふと自分の所へ関さんが何枚か資料を持ってきた。申し訳なさそうに眉を下げて私に差し出す。

泉「はい、大丈夫です!これで関さんの仕事が少しでも減るなら本望ですよ!」

関「はは、頼もしいな」

夏目「怜ちゃんー、俺の仕事も減らしてよー」

由井「泉、俺に皮膚片をくれたら代わりに仕事をやってやろう!」

泉「どっちも嫌です!」

関さんに言ったことをいいことに2人が食いつくが、そんな2人のお願いを聞いてやるほど私はできた人間じゃない。とゆーか、由井さんは相変わらずといったところで…でも皮膚片あげたら仕事やって貰えるのか、と心のどこかで気持ちが揺れた自分がいたのは認めたくない。

ふぅ、と息をついて資料に目を通すと、ふと端に付箋が貼られていた。何か追記の情報だろうか、と見てみると―――

泉(あ…これは…)

忙しくて自分で書いたことも忘れかけていたあの付箋の返事だった。関さんの丁寧な字で付箋にちょこっと書かれていた。

泉(大輔さん…)

自分の口角が無意識に上がるのが分かった。私はその付箋をペリっと剥がし、気づかれないように引き出しに入っていたメモ帳にぺたりと貼り付けた。




"頑張りすぎたら今日の夜ご飯抜きですよ(笑)無理しないで下さいね。"

"それは困る。今日は早く帰れるようにするよ、怜のご飯食べたいからな。"
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