第28章 ep28 実感
矢巾が入り口付近にいたりこを見つけ挨拶する。
続けざまに挨拶してくる下級生。
「おっす」
岩泉や、隣のコートで二段トスを練習していた花巻、それにブロックを飛ぶ松川が手を上げる。
そして、
「やっほ、お疲れ様、ありがとね」
ひらひらと手を振る及川。
レギュラー陣が揃いも揃って自主練している。
「皆、どうしたの・・・今日試合だったんだから、早く休まなくちゃ」
「何かよ、悔しすぎて、バレー以外のこと手ぇつけらんねぇんだよ」
ボールかごを押しながら花巻が言う。それに頷く松川。
「絶対へこませてやろって思う相手に毎回負けて、準優勝でも嬉しくねぇ」
傍から見れば輝かしい成績なのに、現状に満足しない彼ら。
誰もが負けた直後にでも上を向いて更なる進化を求めていた。
「凄い・・・」
ぽつりと呟いた。
「りこさん、やっぱり俺、及川さんのサーブ、Aキャッチで返せるようになんなきゃ、ウシワカさんのサーブ取れないって思いました!今日から特訓します!」
「へーん、そう簡単に取らしてやんねーよ、渡っち!」
目をギラギラさせてレシーブする渡、それに重く速いサーブを打ち込む及川。
どんなキャッチも懸命に持っていく矢巾。
それを決めに行く岩泉。
させまいと阻む金田一、国見・・・・・・
みんな、立ち止まってない。
「ほんとに、凄いよ・・・・・・」
彼らの姿を見て、りこはある決心が芽生える・・・。
(私も、もう一歩、進もう・・・!)